女Bは、筆者と公園にやって来た。
久々の場所で、とても懐かしい気持ちになった。
「見て、ブランコめっちゃ短くなってる」
「ほんとだー。ガキんちょがやったんだろね」
「あれどうやって短くすんのかね?」
「あ、それはね、クルクル回すの」
「へ~」
サクサク……
湿った空気に触れて、鮮やかに伸びる雑草。その中を割って歩くと、少し寒い。
「ブランコこぎ過ぎて、体が前にポーンと出てさ、ここの柵に顔とか」
「あ~きっと痛いよね」
「ミケランジェロはね、子どもの頃に喧嘩して鼻曲がったんだよ」
「みけ……って本物のミケランジェロ?」
どこに偽物がいるんだ。
「うん」
「へ~」
サクサク……
ふいに、女Bが月を見上げた。赤みを帯びた空に、すでに白い月が半分顔を出している。
「あぁっ」
女Bは急に感嘆の声を上げた。
「あの月に向かってユノ―」
あ、今からユノと月を重ねて何かを拝むんだな。
筆者の一瞬の判断で、彼女を驚かせる事にした。
横で月に向かって拝む彼女の両肩をいきなり、思い切り叩く。
「わあっ」
「ほがぁあああっ!」
「あはははっはっ」
「はぁっ!はぁ!はぁはぁ……」
「こらこら、あまり住宅街で大声出すと」
「こらー!!」
外にいる解放感か、二人で笑った。
「で?月に向かって?ユノが何??」
「あぁ、あの月にユノがどれだけ―」
と。
遠くのお宅で子どもの声。
「が~っが~っ」
アヒルのモノマネかね?
「もおっ」
後で聞くと、この思いを(ユノへの思いを)月を見ながらユノに伝えようとしたという。
帰り際、
「この月をユノも見てると思うと……は~」
と、月をじっと見ていた。
0コメント