おいおいおい、おいおいおい
「予約されていないってことですか?……え?いえいえ、Cさんはツアーで予約を……え~?」
おいおいおいおい
私は女Aの電話口から聞こえてくる会話を静かに、口をあんぐりと開けながら聞いていた。
一緒のホテルに泊まる予定のトンペン仲間、Cさん。
彼女は「ダブルブッキングした!」と先日SOSを上げた張本人。
そして今、女Aは「Cさんと〇月✖日に泊る予定の女Aです」とホテル側に連絡していたところである。
勘の良い方は、もうお気づきだろうか?
そう。彼女の名前が、予約客の中に名前が無いと、ホテル側は言ってきたのだ。
「もう!なんなのかしら!」
女Aは、不思議やら怒りやらで複雑な面持ちだ。食卓について、顎に手を当てている。
そこへ女Bも加わった。
「Cさん、予約してないの?」
「ホテル側は名前が無いって」
「でも、私の時の事もあるから、もう一度別のホテルマンに確認した方が」
「……そうね」
『私の時の事』とは、数か月前に女Bに起こったホテルでのハプニングの事だ。彼女はその時、定期券を失くした、とホテルのスタッフに伝え、そのケースの特徴もしっかりスタッフに伝えたのだが、「ありません」の一点張りで、あえなく断念。しかし諦めきれず、すぐにまた別のスタッフに聞いたところ、「ありました」と拍子抜けの一言を聞いたのだ。何度も聞いてみるもんだね、と言う彼女の深刻な顔は、『後にも先にも』、である。
そういうことで、今回ももう一度確認してみると良い。
とその前に。
「ねえ、CさんのダブルブッキングSOSを受けて、ヘルプで予約したんだよね??」
私は何気なくそう言った。
ダブルブッキングでSOSを出した本人の名前が無いなど、おかしな話である。
すると女A、女Bは、
「…………」
え?
「…………」
まさか?
女A、女B、お互いの顔を見つめ合う。あと、少し口が空いている。
「そうよ……」
「そうだわおかしいわ」
忘れてたのか。
「Cさんに電話してみてん!!」
「確認しよう!」
女A,慌ててCさんに連絡を取った。
「……そう、名前が無いなんておかしいわよね……あ、今から自分でホテル側と連絡する?あ、うん分かった。じゃいったん切るね」
プツッ。
あとはCさんからの電話を待つのみ。
もしホテル側に自分の名前が無いと知ったら、Cさんは荒ぶる客となるだろうか。
ドキドキ……
しばらくして、女Aの電話が鳴った。
「もしもしどうだった??……あ、うん、うんうん……え?!……あはは!」
私も女Bも、女AとCさんとの電話を静かに聞く。
よもや手違いがあったかと顔をこわばらせた。
「うん、うーん、良かった良かった。はーいそれじゃあホテルでね~」
あ、良さそう
「どうだった??」
女Aが電話を切ったところで、すかさず聞いた。
「なんかね、ホテル側が、Cさんの名前を間違えて登録していたんだって~」
え
「え?なんて予約していたの?」
女B、せまる。
「あのね、Zさんだって~あはは!」
ほーうZさん
※実際はCさん、なんて名前ではありません。ここでは発音的に近しい「Zさん」にしました。まぁ、イメージ的には「佐藤」と言ったのを「え?シャドウ?」と聞き間違えた感じです。そう、それとほぼ同じ。
「まぁ良かったね~」
「うん」
「よかたじゃーん」
うん。平和平和。
このまま何事もなくコンサートへれっつらGO~
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